名古屋大学理学部・菅島臨海実験所の臨海実習は、現在はどうなっているのか分かりませんが、以前は実習生が研究テーマを考えて、2〜3日間実験に打ち込んで1つの研究をまとめ上げるという、その後の研究生活に直結するようなものでした。いや、学部や修士課程では学生自身が研究テーマを考えることなど稀ですので、その上を行っていたのかも知れません。東北大学の美濃川拓哉さんも「だから、名古屋大学の臨海実習には、ぜひとも行きたかったんですよ」と仰っていました。私が在籍していた佐藤研でも、修士課程の途中で「秘密実験」のテーマを、頭を絞りつつ考えるようになっていました。
 私が特に印象に残っているのは、ある女子学生なのですが、なかなか研究テーマを決めずに、しばらくの間よく分からないパイロット実験をやっていたのですが、ついにテーマを定めると猛然と実験を開始し、最後にはミズクラゲの光受容に関する素晴らしい研究をまとめあげた例でした。
 彼女も間違いなく素晴らしい「ディープ・シンカー」だったのだと思います。早く研究テーマを決めて長く実験を行うよりも、研究テーマを決めるプロセスに時間を大幅に割いた方が良いのだと感じました。
 
 ところで、京都大学には生物物理学教室という教室が、名古屋大学には分子生物学教室という教室があります。たぶん、これらの教室が設立された頃には、記載的な「動物学、植物学、生物学」とは一線を引く意味で命名されたのだと思います。
 私が以前いた京都大学理学部動物学教室の半分は、分類学、進化学や人類学の研究室でした。これらの研究室の大学院生は、総じて言うとものすごく頭が良く、またスタッフは議論好きというか、議論が達者な方達で、教室の話し合いが長くなるので、佐藤さんをはじめとする私の研究室のスタッフは閉口していました。
 そういう「文化の違い」を理由に、生物物理学教室や分子生物学教室が立ち上げられたのかも知れませんが、時には重要な問題について、長い時間をかけて議論することも大切なような気もします。教室会議で全員が一所に集まることは非効率的でナンセンスですので、メーリングリストで会議を行ってみては如何でしょうか?それなら家に帰ったあとでも物を考えることができます。物事を決定するときには、会議だとどうしても「声の大きい人」の意見に引きずられてしまいますので、匿名投票を行うのがベストだと思います(「マクナマラ」で書いたようにサイレント・マジョリティが結局は正しい選択を行う)。

 ところで、「グリコシダーゼと糖鎖による精子と卵の結合」でお世話になったのですが、岡部勝先生の作られたSperm-eggメーリングリストはクローズドな状態に留まるものではなく、議論の内容をweb経由で第三者が見ることも可能になっています。この点において、Sperm-eggメーリングリストは内容の類似した「動植物アロ認証」フォーラム・メーリングリストよりも遥かに優れていると思いますので、「動植物アロ認証」フォーラム・メーリングリストも、同様の公開されたwebサイトを立ち上げてみてはどうでしょう?Sperm-eggメーリングリストには公開することで何か不都合なことがあったというのであれば、その限りではありませんが。

 

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