手塚治虫さんの「火の鳥・未来編」というのは私が生まれる前の1967年のマンガなのですが、それを全く感じさせない素晴らしい作品です。他の巨匠によるマンガ作品の多くが今の目で見ると古びたものに感じられてしまうだけに、手塚治虫さんは本当にものすごいです。私は「1・2の三四郎2」、「スラム・ダンク」、「ハチミツとクローバー」などのマンガ作品も時代を越えて残っていくと思っているのですが。

 この話は35世紀に、人類が地上での生活を諦めて、地下に5つのメガロポリスを作って住むようになったところから始まります。地上は、地球の生命力が衰えて、殆どの生物にとっては住むことの出来ない場所になっていました。主人公は山之辺マサトという人間、その恋人はタマミという人間に変形したムーピーという不定形生物です。ムーピーはかつてはペットでしたが、一種のテレパシー能力を用いた「ムーピー・ゲーム」が人類をスポイルするとされ、メガロポリスでは保有を禁止されて全てのムーピーは殺すように、と指令が出されていました。メガロポリスでは人類はコンピュータに自らの支配を委ねていたのです。
 メガロポリス間のコンピュータの対立に端を発して、すべてのメガロポリスは破壊され、地球上のあらゆる生命は死に絶えます。山之辺は火の鳥から永遠の生命を与えられ、生命を復活させる使命を受けます。その過程で、ムーピーは500年の寿命しか持たないので、タマミは「ムーピー・ゲーム」で山之辺を楽しませながら死んでいきます。
 人工生命がうまく機能しないことなど、様々な試行錯誤を繰り返し、山之辺は生命の進化をもう一度やり直すしかないことを悟ります。すさまじく長い年月を経て人類が再び発生してきたその時、「神」「造物主」となった山之辺は、火の鳥の体内でもう1度タマミと出逢って今度は永遠に一緒に暮らすことができるのです。

 私の現在の眼から見るとこの話にはいくつかのツッコミどころがあります。例えば全てのマクロ的な生命を絶滅させることは可能かも知れませんが、「バクテリアなどの生命を絶滅させることは地球ごと恒星に飲み込まれでもしない限り不可能ではないのか?」とか、人工意識を形成できたということはすごいことなので「人工生命の、皮膚を強化する研究を重ねていけば良いのではないか?」などです。でもそれらのツッコミどころがあったとしても、このマンガはなお、ノーベル文学賞に値するような素晴らしい作品です(手塚治虫さんはもう亡くなってしまいましたが…)。世界中の人たちに読んでもらいたい気がします。

 

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