1997年に報告されたklothoミュータントは骨粗鬆症や動脈硬化といった、ヒトの老化症状に類似した様々な症状を示し、寿命が短くなるマウスでした。このミュータントはa-klothoというたった1つの遺伝子の産物を欠失したマウスです(klothoはテミスという遺伝子名のモデルになった遺伝子の1つです。klotho研究に関しては下記の日本語レビューをご覧下さい。

http://yakushi.pharm.or.jp/FULL_TEXT/130_1/pdf/003.pdf

 「klothoマウスの表現型はカルシウム代謝異常の典型例だ」と考えて、あまり深くは省みなかった研究者の方も多かったと思うのですが、2005年の論文

Science 309, 1829-1833 (2005)
Suppression of Aging in Mice by the Hormone Klotho
Hiroshi Kurosu, et al.

でa-klothoを過剰発現させるとマウスの寿命が約30%延びることが報告されました。寿命を延ばすような「夢の遺伝子」は実在しないのではなく、現在の状態は最適化されていないもので「寿命を延ばす遺伝子」も実在しているということです。また「カルシウム代謝を調べることが、老化の表現型の中心的な研究である」ということも分かりました。
 その昔、核酸ではなくタンパク質が遺伝子の本体だと考えられていた時、DNAの半保存的複製が明らかになってそれが覆されたことがありました。klothoの表現型もそれと似たようなものかなあ、と思っていたのですが、実はそうではなかったと言うことですね!

 以前に「原子力発電所・その2」で書いたガンの罹患率についても、統計は明確に免疫システムがガンの発症を抑制していることを示していました。ですので、そのうちガンの発症を抑制するような「夢のクスリ」も出来てくるのかもしれません。

 

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