2007年にNHK連続テレビ小説で放映された「ちりとてちん」は視聴率はさほど伸びなかったかも知れませんが、私にとっては過去に放映されたドラマの中のベスト5に入る大傑作でした。

 主演は貫地谷しほりさんと青木崇高さんです。福井出身の心配性でものごとを後ろ向きに捉える女の子(貫地谷しほりさん:和田喜代美/徒然亭若狭)が、一念発起して大阪で落語家になる道を目指すというストーリーです。青木崇高さんは徒然亭草々という兄弟子を演じており、ヒロインの憧れの対象で後に結婚します。彼らの落語の師匠が、渡瀬恒彦さんの演じる徒然亭草若です。

 このドラマには心に残る名シーンがいくつもありました。ヒロインの兄弟子で徒然亭小草若(茂山宗彦さん)という人がいるのですが、草若の実の息子なのに落語の腕はなかなか上達せず、一発芸タレントとしてTVでは扱われていました。実の親を師匠にすることに、小草若には色々な想いがあったかも知れませんが、最後の晩(徒然亭草若は重い病気で死んでしまうのです)に小草若は、草若の布団の中にやって来て息子として眠りました。もう泣けて泣けてしかたがありませんでした。

 小草若が初めて弟子入りした時のシーンも忘れられません。草若は何事でもないようなそぶりで振る舞うのですが、その実、小草若がこの世界に入ってきてくれたことが嬉しくてしかたがない、と奥様(藤吉久美子さん、小草若の母)と抱き合って喜んでいるのです。

 そして草若の最期、楽屋に現れるはずのない草若が姿を見せて、少し話をしたあとでヒロインは師匠が今亡くなったのだということを知るのです。そして死後の世界で、草若師匠は先に旅立った奥様(三味線の囃子方)が舞台で待っているというのを聞いて「そりゃ、うれしいなあ」と言いながら、彼女の大好きだったタンポポを口に咥えて舞台に入っていきます。
 この世で一生懸命生きていれば、死んだ後で人はきっと逢いたかった人と再会できるのだ、という素晴らしいメッセージです。私はこの部分でも朝から涙が止まりませんでした。

 

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