「2R仮説」でちょっと触れた話題を補足します。
 「全ゲノムが2回重複した」ということになると、円口類よりも上の脊椎動物はすべて同じ遺伝子を4コピーずつ持っていることになります。現にdlx1, dlx2, dlx3, dlx4とかHox cluster A, B, C, Dというような遺伝子名がつけられています。これらの遺伝子の機能が共通したものなら、遺伝子をノックアウトしたときに表現型を示すようなものは1つもないことになりますが(別の遺伝子が代わりを務めるので)、実際には例えば受精の分野なら、Calmegin, Adam1a, Adam2, Adam3, Ace, Pgap1 そして CD9 と Izumo などノックアウトマウスの受精の表現型がおかしくなる遺伝子がいくつも知られています。つまりこれらの遺伝子では、残りの3コピーの遺伝子は消えてなくなったか、機能を変えてしまったということを意味します。

 以前に書いた「受精のフレームワーク作り」という文章ではマウスでフレームワーク作りをするようなこともちょっと書きましたが、私はやはりそれは無理なことだと思っています。つまり「ノックアウトマウスで受精が正常に起こるかどうかは偶然によって決まるもので、本質的な意味に乏しい」と考えるからです(マウスの受精研究者の皆さん、すみません!!でも皆さんそう考えて、その対策も練っておられると思いますので、色々な意見をメールでおよせ下さったら幸いです。論文が思い出せないのですが、4つの遺伝子とも同時にノックアウトさせたようなマウスの論文を以前読んだような気がします。しかしながら現時点でほとんどのノックアウトマウスは単一コピーの遺伝子のみを欠失させたものです)。マウスの表現型をもとに既存のフレームワークの作り直しを求めるということが実は間違ったことで、既存のフレームワークは、やはり大部分正しいものである可能性もあります。
 従ってマウスの受精研究者は、マウスを用いた研究ではフレームワーク作りは行わずに、ノックアウトマウスの表現型をいろんな分子の機能を理解することに役立てようと考えているのかも知れません。マウスを用いた研究が受精研究の分野に与え続けている影響はとても大きなものです。
 脊索動物でゲノム重複を起こしていない動物というと、現生するものとしてはホヤ類とナメクジウオしかいないということになります。と言うことで、オタマボヤを受精研究のモデル動物として使ってみてはどうかな?と書いた次第です。本当はこのような話題はメーリング・リストに持ち出した方が良いのかも知れませんね。

 

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