「2R仮説」というのは進化学者の大野乾(おおのすすむ)が1970年(!)に提唱した説で「脊椎動物の進化の過程で全ゲノム重複が2回起こって、全ての遺伝子が4コピーずつ存在することになった」というものです。2Rとは「2 rounds of duplication(2回の重複)」という意味です。今では世界中で広く受け入れられています。大野乾さんというのは国語学者の大野晋さんとは読み方は一緒ですが別の人です。こんなことを書く必要はないと思うのですが、私は以前気になってこの問題をネットで調べたことがあるので、蛇足まで…。

 ゲノム重複が起こったことは間違いないこととして定説となっているのですが、じゃあ「いつその重複が起こったのか?」ということが次の疑問になります。
 脊索動物の祖先のナメクジウオのゲノムは1倍体で、前にも書きましたが不思議なほど化石的な特徴を備えているように見えます。ホヤゲノムも1倍体です。ホヤのゲノムは大分変形が進んでいて、化石的なものではありません(ついでに書くと10年以上前、進化学者の友人が「ギボシムシ胚の形態が非常に化石的なものである」ということを力説していました。この種のゲノム構造も調べてみたら「化石的なもの」であって面白いかもしれません)。
 どうも脊椎動物になった時に1回のゲノム重複が起こったようです。ヤツメウナギやヌタウナギなど、円口類とよばれる動物は、ホヤなんかの生き物と軟骨魚類の中間に位置する原始的なサカナなのですが、これらのゲノムは一般的には偽二倍体であると考えられています。これらの動物は、2回のゲノム重複の中間に位置する生き物として(1回は重複が起きたが、2回目の重複はまだ起こっていない)現在注目を浴びています。
 軟骨魚類(サメやエイなど)以降の脊椎動物は、偽4倍体のゲノムを持っています。硬骨魚類ではどうももう1度ゲノム重複が起こって偽8倍体のゲノムを持つようになったようです。詳しくは(http://www.k.u-tokyo.ac.jp/news/20070607fishly-genome-bessi.html)をご覧下さい。
 また、この問題については研究室の同僚でもあった沖縄科学技術研究基盤整備機構 OIST の川島武士さんが詳しい記事(http://yondeokure.exblog.jp/8426809/)を書いてくれていますので(大野乾さんが「1970年の時点でどうやってゲノム重複が起こったか調べたのか」など興味ある話題がたくさん載っています)、興味のある方はぜひ記事を読んでみて下さい。

 

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