以前「ナメクジウオゲノム」という文章の中で脊索動物の脊索の起源について考察を加えてみました。もしかするとそれよりも重要だと思われるのが、脊索動物が共通して持つ中空の神経管の起源です。

 今からおよそ100年ほど前、ウォルター・ガースタングというイギリスの動物学者がいました。幼生進化を提唱したことなんかで有名な生物学者ですが、彼が脊索動物のボディプランを一連の論文の中で議論したものをまとめて「ガースタング説」と呼びます。私が彼の言っていることの全てを正しく理解できているとは到底思えませんが、彼が論文の中で常に正しいことばかりを言っていたとも思えませんので悪しからず…。
 私が考える「ガースタング説」の一番のポイントは中空神経管の起源についてなのです。脊索動物のすぐ外側の棘皮動物(ウニやヒトデなど)や半索動物(ギボシムシなど)の幼生には繊毛帯と呼ばれる繊毛を生やした細胞の帯があります。これらの幼生の繊毛帯は口の周りをぐるっと一回りしています。
 ガースタングは「この繊毛帯が神経管の起源になった」と考えました。つまり繊毛帯が前後に長く伸びて棒のようになり、ジッパーのように閉じて中空の神経管を作ったというものです。ちょっと分かりにくいので(http://scaa.usask.ca/gallery/lacalli/tutorial/chordates.php:ラカリというカナダの生物学者のwebページ)というところから引っ張ってきた図にリンクを張っておきます。


 このことによって、もともとあった繊毛は内向きに生えることになると予想されますが、実際に見てみるとどうでしょう。神経管の中にはやはり繊毛がちゃんと生えて走っているではありませんか!
 そうした論文が私の知る限り80年代や90年代にはいくつかありました。しかしながら「ガースタング説」が明確に否定されたという話も聞かないままに、脊索動物のボディプランを棘皮動物や半索動物のそれと絡めて議論したような論文はめっきり姿を消したように見えます(私が知らないだけかも知れませんが、少なくともメジャーな雑誌では)。

 私はガースタングは少なくともこの重要な点については正しいことを言っていたのではないかと思っているのです。このことについてもやはり議論は必要なのかも知れません。私の知る限り、沖縄科学技術研究基盤整備機構の佐藤矩行さんはこの分野の第一人者です。そして脊索動物の起源についてガースタングとは異なる考えも持っています。筑波大学の和田洋さんもこの問題について猛烈に詳しく、きっと色んなことを教えてくれると思います。大阪大学の西野敦雄さんも非常に詳しいです。このような人たちといつかこの問題について議論できる日があればなあと思います。そのためにはしっかり勉強を重ねなければいけませんが。。

 

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