2回続けて論文の紹介になってしまうので読者の皆さんはうんざりしていることと思うのですが、どうしても書きたい話だったのでよろしくお付き合い下さい。論文は

Nature 453, 1064 (2008)
The amphioxus genome and the evolution of the chordate karyotype(ナメクジウオのゲノムと脊索動物の核型の進化)
Nichoras H. Putnam et al.

というものです。この論文には以前の文章で書いた佐藤さんの名前も重要な著者として入っています。
 この論文の結果の重要な点は主に2つあります。一つは全ゲノム比較解析を行い、「脊索動物の根本の生き物は、従来広く信じられていたホヤ類ではなく、ナメクジウオだ」ということを決定的に明らかにしたということです。
 もう1つの点は染色体の模式図を作って、脊索動物の進化の過程で2回の全ゲノム重複が起きたことを見事に図示したことです。このような解析は必要なことだとは思っていたのですが、その反面、結果がめちゃめちゃになってしまうのではないかと心配していました。しかしながらナメクジウオのゲノムは不思議なほど、化石的というか原型を留めているように見えます。

 脊索動物の共通祖先がナメクジウオ的なものであったということで、にわかに(私の中で)クローズアップされてきたのが、ちょっと昔の論文なのですが

Developmental Biology 224, 168–177 (2000)
Genes Expressed in the Amphioxus Notochord Revealed by EST Analysis(ナメクジウオの脊索で発現する遺伝子)
Miho M. Suzuki and Nori Satoh

です。この論文はナメクジウオの脊索に筋肉で発現する遺伝子が数多く含まれているだけでなく、収縮を行うなど筋肉的な特徴も備えている(この報告はまた別の論文ですが)という報告です。
 脊索は一般的には内胚葉の性質と中胚葉の性質を兼ね備えた脊索動物における「新発明」だと考えられています。しかしながら、論文には明示的に書かれていませんが(当時は脊索動物の共通祖先はホヤ類だと思われていたので…。)、共通祖先がナメクジウオ的なものであるということは、脊索動物の脊索はその祖先の筋肉組織から進化してきたのでは?と思います。もしそうであればこの論文は先駆的な、素晴らしいものであったということが言えるのではないでしょうか?もう少し考えを深めてみて良さそうだったら論文にまとめて世界中の人に問うてみようかなと思うくらいです。

 

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